- Column -

■ 灰色の世界

暗い道を散歩してた。
街灯もなく、周りは森。
微かな月明かりで、前が見えるか見えないかという程度の明るさ。
何度も道から足を踏み外しそうになる。

こんな時、何故か人間の体の構造のことを考える。

人間は、物体を認知する為の手段として光を選んだ。
コウモリなんかは音を選んだ。
蛇などは、獲物を捕獲する為に熱を関知出来るようになった。

人間には五感があり、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚を駆使して物体を認知する。
でも普通の人間が物体を認知するのに使っているのは専ら視覚と触覚だと思う。

目を閉じて歩くと、知らず知らずの内に曲がって行ってしまう。
これは視覚で微調整してるからだろう。

もし、もしも人間が進化の過程で、物体を認知する為の能力として別の感覚器を選んでいたら、世界はどうなっていたのだろう、と考える。

エジソンが電球を発明したが、これは全く意味をなさない発明になる。

人間には、人と出会った時に、多少なりその外見を見てその人を評価する部分があるが、そんなことは不可能となる(その別の感覚器でするのかも知れないけど)。

都会の夜の街の様に、ネオンで彩られた景色もなくなる。代わりに、別の感覚器に訴える何かが蔓延しているだろう。

映画などの娯楽もなくなる。

この世界での常識は一切通用しない。

………

そんな灰色の世界を、この視覚で一度「見て」みたい。

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